しじみに含まれる鉄分
しじみに含まれる鉄分
味噌汁の具材としてなじみの深いしじみには、有用成分であるオルチニンのほか、必須ミネラルの「鉄」も多く含まれています。
貧血予防に有効とされる鉄分は不足しやすい栄養素のため、普段から意識的に摂取する必要があります。
鉄分不足が生じるのは、そもそも鉄が多く含まれている食品が少なく、必要とする摂取量に届きにくいことや、月経や妊娠・授乳、スポーツなどで多くの鉄を体内から失うことがあるためです。
また、鉄は一時的に補うだけでは増えない性質があり、安定させるには継続して摂取することが重要とされています。
鉄分を多く含むしじみは年間を通して流通している食材のため、安定して入手できるのが利点です。
旬の時季だけでなく、鉄不足を補うために普段からしじみを活用するのも一つの方法といえるでしょう。
この記事では、しじみに含まれる鉄分の働きについてご紹介します。
しじみに豊富な鉄分とは
鉄とは、赤血球のヘモグロビンを構成する成分であり、全身の細胞や組織に酸素を運ぶ役割を担っている必須ミネラルの一つです。
人体には3~4gの鉄が存在し、その70%は血中で酸素を運搬したり、筋肉内では血中の酸素を筋肉に取り込んだりするため「機能鉄」と呼ばれています。
それ以外は、機能鉄が不足した時のために肝臓や骨髄に蓄えられる「貯蔵鉄」となり、機能鉄が足りなくなると血中に放出されて利用されます。
鉄分の種類とは
鉄は小腸で吸収されるミネラルですが、その吸収率は平均しておよそ8%と非常に低いため、不足しやすいのが特徴といえます。
栄養素としての鉄は「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類に分けられ、それぞれ含まれる食品や吸収率が異なります。
ヘム鉄は肉類や魚介類などの動物性食品に含まれる成分で、吸収率はおよそ10~30%とされています。
赤血球の中に存在するヘモグロビンは、ヘム鉄とグロビンというタンパク質から構成されています。
つまりヘム鉄はタンパク質と結びついた形で存在しており、非ヘム鉄に比較し5~6倍の吸収率があります。
一方の非ヘム鉄は野菜や穀類など植物性食品に含まれ、一般に日本人が食事から摂取する鉄の85%以上を占めています。
しかし、吸収される際に食物繊維やタンニンなどの成分から阻害を受け、その吸収率はおよそ1~8%に留まるため、ヘム鉄のほうが吸収率にすぐれているわけです。
鉄分の不足と過剰で起こる症状とは
鉄は、ビタミンAやヨウ素と並んで三大欠乏微量栄養素の一つに挙げられ、世界的にも多くの人が不足しているミネラルです。
鉄分の欠乏による代表的な症状は貧血で、その90%は鉄分が不足することで起こるといわれています。
貧血は血中のヘモグロビンの量が減少して、血液が十分な酸素を運べなくなり体内が酸欠状態になることで、めまいや息切れ・動悸、倦怠感や脱力感といった症状が現れます。
酸素を運搬する働きをする機能鉄が不足すると、貯蔵鉄が血中に放出されて不足分を補いますが、貧血はその貯蔵鉄も欠乏して初めて起こる症状なのです。
機能鉄が欠乏する鉄欠乏性貧血の症状が現れた時には、貧血予備軍の状態といえるわけです。
一方、鉄分が過剰になると、便秘や嘔吐などの胃腸障害や不整脈などの症状が現れるといわれています。
ただし鉄は体内での吸収率が低いため、必要以上に吸収されない性質があり、通常の食事で摂取する分には過剰症の心配はないとされています。
薬やサプリメントなどを利用して長期間の過剰摂取をつづけていると、肝機能に悪影響が及ぶ可能性もあります。
しじみはヘム鉄が豊富な食品
しじみは貝類のため動物性食品に当たり、含まれている鉄分はヘム鉄になります。
ヘム鉄はポルフィリン環という有機化合物に囲まれているため、胃壁や腸管を荒らしにくいうえ、食物繊維やタンニンなどから吸収を妨げられにくいのが特徴です。
さらにヘム鉄分解酵素である「ヘムオキシゲナーゼ」により吸収量を調節されるため、過剰摂取になりにくい性質から、ヘム鉄は身体にやさしい成分といえます。
しじみのヘム鉄の含有量は5.3mg/100gとなっているため、成人女性の鉄分推奨量10.5mgの約半分を摂取できることになります。
しかし、前述のとおり日本人が摂取する鉄分の大部分は非ヘム鉄のため、動物性食品も積極的に摂り、バランスよく鉄分を補うことが重要です。
食品での鉄分の補給は、継続的な摂取が重要となるため、胃壁の影響が少なく吸収率のよいヘム鉄を含むしじみを上手に活用して、鉄不足の改善に役立てるのをおすすめします。